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アレッポの石鹸と雑貨屋と世界のこと。

コラムを書くとき、
いつもタイトルを仮でもいいので決めて書き始めます。
それにしても今回のタイトルは大仰かなあと思いつつも、それでもあえてこのタイトルで徒然なるままに書き進めてみたいと思いました。

今回のコラムは、
雑貨屋ココウォークの隠れたロングセラー商品『アレッポの石鹸』のご紹介であり、それにまつわる物語と、一市民から見たある世界の見え方についての駄文になろうかと思います。
ジャーナリズムとも違う、オーガニック経済主義とも違う、巷にあふれるいち雑貨屋の戯言とご高覧ください。

アレッポ石鹸とは

アレッポの石鹸は中東シリア第2の都市アレッポで千年以上の伝統をもつ無添加のオリーブ石鹸です。
刺激が少なく保湿力が高く、お肌に優しいのが特徴です。

そして私たちが販売しているのは、1994年創業以来アレッポの石鹸一筋に販売を続けている株式会社アレッポの石鹸さんの『アレッポの石鹸®』です。

アレッポの石鹸®は、オリーブオイルをふんだんに使用し、人の肌と似たオレイン酸を多く含んでいるためお肌にとてもやさしいのが特徴です。汚れを落としつつも洗い上がりはしっとりなめらかで、スクワレン(保湿成分)も含んでいるのでお肌を健康に保ちます。特に、デリケートなお肌の方や赤ちゃんにもおすすめです。
そして、これひとつでなんと髪の毛、顔、身体まで全身洗うことができます。

アレッポの石鹸の中は緑色。


この美しい緑色は、材料のオリーブオイルとローレルオイルの色です。
オリーブオイルは食用のオイルを搾った後、さらに搾ったものを使用しており、オリーブの果実や種なども潰されとても濃い緑色をしています。ローレルオイルも濃い緑色をしております。
そのため作りたての石鹸は緑色をしていますが、1年以上の熟成期間を経て外側から乾燥し茶色に変色していきます。熟成したものほどより濃い茶色になり、使い心地もまろやかになっていきます。
店頭でも入荷から時間が経過したものはより濃い茶色になっていきますが、店頭で濃い茶色のものを見つけたら迷わずそちらを選んでみてください!

アレッポの石鹸®はどうやって作られているのか

その工程はとても素朴です。

アレッポでは毎年11月頃に、殺虫剤をほとんど使わない良質なオリーブオイルが収穫されます。石鹸には、食用のオイルを搾り取った後さらに搾り込んだ物を使用します。それをベースに釜炊き、塩析、カッティングなどの工程を経て、1年以上熟成させることで表面の緑色はベージュ色に変化し、余分な水分は抜けて、硬く溶けにくく、マイルドな石鹸になります。
その詳細はアレッポの石鹸ホームページに詳しく掲載されていますので、ご興味ある方はぜひじっくりとご覧ください。この石鹸への愛がさらに湧いてくるようなストーリーです。

内戦とアレッポの石鹸

時折日本国内のニュースにも登場するシリア内戦。
中東・北アフリカで長期独裁政権を倒した2011年の「アラブの春」といわれる民主化運動に端を発し、政権の世襲により50年もの長きにわたって権力を握るイスラム教アラウィー派のアサド家と、その激しい弾圧に抵抗する反体制派との内戦として、すでに10年もの年月が経過し、約40万人以上が死亡し1000万人以上の避難民を生んだとも言われています。

その背景には宗教や民族の複雑な歴史が大きく横たわっており、日本人である私が独善的な私見をのべるべきものではありません。
しかし、私たち日本人が、ニュースの中でなんとなく頭に入れていながらも、その内実や実態を深くは知らないし知ろうともしていないことだけは確かなのかもしれません。

※参考文献

アレッポでも2012年春頃から戦闘が拡大、激戦地と化します。
アレッポの石鹸®を作り続けるアデル・ファンサ社の工場はアレッポ市の中でもとりわけ激戦地のブスタン・カサル地区に位置し、2012年末より石鹸製造が困難になりました。

2014年、職人とともに同国ラタキアに生産拠点を移して以降、現在までラタキアでの生産が続いていますが、アレッポにあったアデル・ファンサ社の石鹸工場は2016年頃爆撃を受け大破しました。
アデル・ファンサ社の社主アデル・ファンサ氏は70年にわたり石鹸を作り続けてきましたが、20年ほど前に現場監督を息子のタラール・ファンサ氏に譲ったため、現社名はアデル・タラール・ファンサ社となっており、現在もラタキアの地で石鹸を作り続けています。
また、アデル・ファンサ氏は2020年9月に93歳で亡くなりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
※映像は2019年1月22日に撮影されたものです。

現在シリア内戦は終了局面と言われながらも局所的に戦闘は続き、およそ半数以上の人々は戦争のために家や仕事を失い、さらには経済制裁による貨幣価値の暴落やハイパーインフレ、物不足に苦しんでいます。

私たちにとってのアレッポの石鹸

かなり重苦しい内容になってきました。
当然かもしれません。
アレッポの石鹸には現在進行形の重い歴史があるのですから。
一方で、遠く海を隔てたこの地で、私たちが手にしているアレッポの石鹸は、あえていえば

『とても肌に優しい自然派の石鹸』

であるにすぎません。
きっとそれでよいのだと思います。

私たちがアレッポの石鹸をお客様におすすめするのは、直接的には、今なお内戦に苦しんでいる人々を救いたいからではありません。ただ、その商品がお客様にとっても利益になるような良い商品であると信じているからです。
しかしその結果が、巡り巡って遠く海の向こうのラタキアの工場の人たちの笑顔に少しでもつなげることができるのなら、一雑貨屋に過ぎない私たちの商売が、一ユーザーの購買行動が、SDGsのステイトメントである
『平和と公正をすべての人に』
に間接的にでも繋がるのかもしれません。

そして、私たちがシリア内戦やミャンマーのクーデターを対岸の火事としてとらえるように、世界の人から見れば東日本大震災もそういうものなのかもしれません。
だけど私たちは知っています。
3月11日が来るたびに、世界のだれかが私たちの震災に心を寄せてくれていることを。
その想いに救われることが確実に存在するのだと思います。
だから私たちもこの商品を手に取った時に、販売する時に、心の片隅にシリアの人々を想う気持ちを抱いていたいと思います。

アレッポの石鹸からシリアを想う。
たまにはこんな事を考えてみたりもするのです。


アレッポの石鹸はココウォーク各店舗およびbonico名古屋店にて各種お取り扱い中です。
ぜひ一度お試しください。

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